Fuyuwa Mahiru story
「元気な男友達 × 主人公」
出会い
♥
始業式を終えて教室に入った主人公(屋敷かすみ)は、担任の先生が挨拶する中初めての環境にそわそわしていた。すると、隣の席の男の子が話しかけてきた。「よう!オレ真昼!俺たち友だちになろうぜ!」
戸惑う主人公。しかしすぐ嬉しくなって、にっこり「うん」と返事をした。
彼の名前は冬羽真昼(フユバマヒル)といい、机の右側にぶら下げていた大きなリュックサックにスニーカーをぶら下げていた。それは何かと聞くと、「これは替えのスニーカー!帰りはこれを履くんだよ。オレスニーカー大好きだから!」と真顔で言われてしまう。
「へ、へえ?(ちょっと変わった人かもしれない?)」
そう思いつつも新天地で初めてできた友達が嬉しくて、わくわくするのだった。<スチル01>
仲良くなるにつれて
♥
入学して初めての冬に差し掛かろうとしていた。
主人公と真昼は席が隣の縁でかなり仲良くなっていた。その頃の真昼は、夏から秋にかけて恋人同士になった同級生が多くいたのを見て、まわりに置いていかれることに焦っていた。そこで彼はひらめいた!
「すげえ良いこと考えた!俺たち付きあっちゃおうぜ!」
いきなりそんなことを言われ、主人公は心底びっくりする。しかし一晩考えた結果、自分も真昼のことがどちらかといえば好きで、付き合ったら楽しそうと思った主人公はOKの返事を出した。
が!よくよく話を聞くと真昼は主人公に恋をしていないようだった。本人曰く、恋をしたことがないがしてみたいと言う。それで主人公を誘った次第と言うことだった。「ど…、どういうこと?」「えっ?怒ってる?」
怒っている!だって昨日の今日で、かなりその気になっていた!
「本当に主人公はオレのこと好きなの~?そうは見えないよ」「え?」「恋ってのはもっとすっごくキラキラしてるものなんだよ!世界が変わっちゃうらしい!何もかもが輝いて、お前以外どうでも良くなるような……そんな熱い恋がオレはしたいの。主人公は今そんな感じなの?キラキラってなった?世界が全く違うものになった?」「そ、そんなにすごい感じではないかも…一緒に居たら楽しいし…」「ほらやっぱり!主人公は恋の魔法をナメてる!」「そうかな!?(私が恋をナメてるというより、真昼くんの理想がものすごく高いのでは!?)」「一緒に居れて楽しい!なら友達で十分だもん。きっとねもっと違う…ものすごい何かがあるんだと思うよ!というわけで、頑張ろうぜオレたち!」
帰り際真昼に渡された理想の恋愛の参考資料…プリンセスとプリンスが出てくる外国のアニメ映画だ。「(こんな恋をふたりでやりたいと…!?)」一連の会話によりみるみる怒りが収まる主人公。それよりもこの無理難題をどう叶えるか心配になってしまうのだった。
仲良くなるにつれて-2
♥
ある日真昼はボディビル雑誌を持ってきて主人公に見せてきた。
「これがオレの最終形態」「!?これに……なるの!?真昼くん!」「おう!マッチョで力持ち!これが王子様だぜ」「ちょっと聞きたいんだけど、真昼くんが王子様を目指すってことは私はお姫様を目指すってこと?」「へへへ」「へへへじゃなくて!」本気か!?と思う主人公。目指すってなんだよと思う主人公。とはいえ真昼は本気そうだ!「まあ主人公は可愛いから!そのままでいいけどね!」「(……)」ちょっと照れる主人公。うーんと考え込んだ。「(お姫様はともかく……もっと真昼くんの好みの女の子にはなりたいかも……)」そう思っていた矢先、彼の好みがわかる出来事が起こる。
真昼の家に遊びに行った時、お姉さんの部屋を見せてもらった。ドレッサーには化粧品がたくさんある。「そうだ!お化粧しようぜ!ここにはたかーいやつも山ほどあるよ〜!」「えっ……!?真昼くんやったことあるの?」「ない!ねえやろう!お姫様みたいになれるかも〜!」「(怖いな……)」
それにお姉さんのを勝手に使っていいのかと聞くと、それもそうだと言った真昼はメールで許可を得てしまった。結局化粧をすることとなったふたり。お姉さんがメールで教えてくれたホームページを参考に下地を塗る主人公。隣を見ると真昼は自分の顔に丁寧に下地を塗り、ファンデーションをはたいていた。驚く主人公、どうやら真昼もやるようだ。
そうして二人の各々の化粧が完成した。
鏡を見てうっとりする真昼。目がキラキラと輝いている、変身した自分をいたく気に入ったようだ!
「オレ……可愛くない?」「え……」「まひるちゃん……タイプかも……オレの理想そのまんまかも……」「…………」「キスしたくなっちゃう……」「(私を可愛いって言ってくれて嬉しかったけど、なんか……、真昼くんの好みって普通と違うかも!)」自分に恋する真昼にちょっと複雑な主人公!このようにつかず離れず、恋人でありながらなにをするでもない、近くて遠い関係が続くのだった。
※そのあと真昼は一年ぐらい化粧した自分の可愛さを思い出してはポーッとしているのだった。主人公は若干引きつつも、「(まあでも、真昼くんらしいな……)」と思うのだった。
告白まで
♥
二年目の文化祭、演劇部の裏方を手伝うこととなった主人公はあくせく働いていた。王子様役である夕暮秋鷹先輩や、騎士役である後輩の江夏慎夜、担任の朝市先生、などなど様々な人に広く関わる主人公を見つめる真昼。彼はいたずら妖精の役回りだった。
彼はそれに満足していたが、そこへ朝市先生がやって来る。朝市と真昼の兄が同級生でかなり仲よく、その関係で真昼は朝市と10年以上付き合いがある気心しれた関係だった。話は主人公についてとなり…。
「のんびりしてたら主人公取られちゃうかもよ?」「…………?なんで?主人公はオレの彼女だよ?」「関係ないよ。ほら見てごらん、主人公は慎夜と仲良さそうに話してる」「………」
ブルルと体を震わせる真昼。急に強い危機感を抱き、舞台袖の大きな全身鏡に映る自分を見ると、王子様でも騎士でもない、赤い帽子に長い髭を蓄えたいたずら妖精(=ノーム)が居た。ショックを受ける真昼。「これ、ちがう。王子様ってもっとかっこよくない?俺、なんか……ノームそのものみたい……」
帰り道主人公に思いを吐露する真昼。ひどく落ち込んだ様子に主人公は驚いていた。「オレが思ってるのは、もっと背とか……高いし、夕暮先輩みたいにマッチョで……さわやかじゃなきゃ……」「それをいうなら私全然お姫様じゃないよ」「何言ってるの?主人公はかなりお姫様だよ!?すっごく可愛い!ラブリー!」「……」主人公は真昼が自分の顔に恋をしたことを思い出して微妙な気持ちになる。「そうかわかった!オレだ!オレが違う!オレがなんか違う!こうじゃない!!」真昼はそう言って走り出したかと思うと、一人で先に帰ってしまった。
◇
こうして「かっこよくなんなきゃ!」と意気込む真昼だったがやることなすこと空回りしてしまう。
ある日珍しく学校を休んだ真昼を心配した主人公が彼の家を訪れると、部屋には沢山の食べ物を食べた跡と一応着替えたらしい制服で絶望する真昼が居た。どうやらストレスの反動で暴飲暴食してしまったらしい。「食べちまった……。オレの主人公への気持ちなんてこんなものかも……」自分らしさと理想の狭間で思い悩む真昼をなだめる主人公。自分は王子様でなく、ノームと信じて疑わない彼に主人公は問いかける。
「真昼くん。真昼くんの好きな映画には背の高い王子様もいれば狐の王子様もいる、怪物の王子様だっているよ。ノームの王子様がいたらまずい?私が好きになった王子様は背の高い王子様じゃなくてノームの王子様だよ。むしろノームの王子様だから良いんだよ!私には真昼くんじゃなきゃ!」
そう言うと真昼はいたく納得し、感銘を受けたらしい。みるみる元気を取り戻した。「主人公~!主人公はすごい!優しい!可愛い!オレ、大好き!」「(おお……!嬉しいかも!)」「オレ、お前に似合う……かっこいいノームになるんだぜ。主人公がオレのこと好きすぎて他がどうでも良くなるくらい胸が熱くなるような……ノームに!どうやったらそうなるかはわかんないけど!」「おう~!まあもう真昼くん以外、考えられないけどね!」「またまた主人公ったら!そんなことばっかり言ってるとダメなんだよ?俺なんか熱がでそう!あ、もしかして熱い恋って、こういう事を言うのかも……!?」
照れ赤くなった真昼がの目がきらきらしていて、そこに主人公が映っていた。<スチル02>
◇
卒業式の日、クラスの皆が居なくなった教室で真昼は号泣した後の顔をハンカチで拭った。ふたりは同じ大学に進学するが、他の友達とは離れ離れになってしまう。それがあまりに悲しいらしく、主人公に問いかけた。
「卒業ってオレ苦手……。卒業したらどんなに仲良くたってなかなか会えないし、すごく遠い友だちになったりするじゃん?」真昼はそうだ!とひらめいた。
「ねえ約束しようぜ!」「いいよ。どんな約束?」「じいちゃんばあちゃんになってもオレたち、ずっと一緒にいよう!」主人公がそうしようとうなずくと、真昼は泣いて崩れた顔でにっこり笑い、主人公の手を取った。「ありがとうさすが主人公!オレはお前がすっごく大事。だから……オレこの手、離さないよ」
エピローグ
♥
大学生になった真昼と今日は休日デートだ。隣の県のテーマパークに行くことになったふたりは、パーク内の写真館へ向かう。そこではキャラクターの衣装を着て写真が撮れるプランがあるのだった。
プリンセスの衣装を着せてもらった主人公はワクワクしながら真昼を待った。カメラマンの前に立つ、すると王子様の服を着た真昼も現れた。
「どう?オレ、似合ってる!?」
照れた様子の真昼を頭から爪先まで見て、主人公は大きくうなずいた!
「ほんと!?オレ、今、本物の王子様になった気分!」
しばらくして家にアルバムが届いた。凛々しい顔を作る真昼の姿を見ると、当日の彼の幸せが伝わってくる。主人公は微笑んだ。
いつの間にか彼の幸せが自分の幸せになっていた。