Tsukimaru Nagi story
「キュートな後輩 × 主人公」
出会い
♥
主人公(真宮ひより)が2年生になった春の、今年の入学式も終わった数日後。
たまたま商店街に寄ると制服を着崩した同じ学園の生徒が、他校生にしつこくナンパされている現場に出くわす。かなり迷惑そうにしており、とにかく誰かに連絡しようとスマホを取り出しているとその生徒と目が合う。
「先輩!遅いですよ、早くパフェ食べに行こ!」
と、ダッシュでこちらでやって来て手を掴まれるとそのまま一緒に走り去ることに。その子のあまりの足の速さについていけずゼーゼーと息を切らすと、「あ、ごめん」と手を離される。
「ご協力どーも先輩。…そのリボンの色、先輩で良いんですよね?」
「う、うん(ゼーゼー)」
「何回も男だって言ってるのに全然聞く耳持たなくて…まったく…」
「大変だったね…ん?男の子?」
スカートの制服を着用し、かつ可愛い見た目からつい女子だと主人公は思っていた。「(確かに声が女子にして低いかもしれないけどそういう子は沢山居るし、ナンパした人も信じられなかったのかな…)」
「変ですか?この格好」
「女の子だと思ってたからびっくりしたけど、可愛いと思うよ」
その言葉に彼はきょとんとする。
「ふーん。…どーも。じゃあ俺はこれで」
その出会いから数日後。教室のごみを捨てに行く途中、校舎裏で誰かが男子から告白されているところを見てしまう。聞き耳を立てたくなかったのだが、どこにも逃げることが出来ず会話が聞こえてしまう。<スチル01>
告白されていたのは先日ナンパされていた1年生の子だった。男子生徒の告白を断り、男子から悪態をつかれ気まずそうにする彼の「自分が着たい服を着るのは良くないのか」という問いに、主人公は「自分の好きにすることが大事だと思う」ということを答える。その回答に感じるものがあったのか、彼はやっと名乗る。
「俺、月丸 凪って言います」
凪は主人公を自分を否定する人じゃないと思い、懐くようになる。
*入学当初は凪は格好のせいで浮いているが、段々と行事や人柄でクラスに馴染むようになっていく。
*スポーツが得意であり、体育祭や部活の助っ人などの活躍がよく見られる。
仲良くなるにつれて
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クールで最初は警戒心のあった凪とすっかり打ち解け、一緒に帰ったり何回も遊びにいくようになった頃、凪からお揃いの服で出かけたいという要望が出る。身長が近いためサイズが合うということで凪の服を借りることに。
当日、双子コーデを楽しむ可愛い二人組みが出来上がっていた。いつもと違うファッションと違う髪形を楽しみながら二人はクレープを食べたりショッピングを楽しむのだった。<スチル02>
楽しいデートももうすぐ終わり、というところで男子高校生のグループとすれ違う。凪の表情が急に曇ると、男子たちが振り返ってこちらに絡んでくる。彼らは凪と同じ中学だったらしい。嫌な雰囲気を感じ取り、それとなく逃げようとするが「まだそんな格好してんのか?」「いつまでやんの?それ」と責めるような口調で投げかけられる。
「うるさい!!そんなの俺が一番考えてんだよ!!」
いつもはクールな凪は動揺し、そのまま走っていってしまう。追いかけた先、公園で膝を抱えてうずくまる凪が居た。
物心ついたときから性別関係なく服を着ていて、小学生のときは周りもほぼ気にしてなかったが中学生になってから女子は味方でも男子がからかってくるようになったこと。それでも全然そんなこと耳に入らなかったけど、急に背が伸びてお気に入りの服が入らなくなったときに心が一度折れたこと。成長が怖くなったこと。
いつかはこれは諦めなきゃいけないことなのかと悩んでいるときに、さっきの男子たちに心無いことを言われ取っ組み合いの喧嘩をし相手はボコボコに出来たものの、彼らと同じ学校に行きたくないということで今の自由な学園を受験したこと。学園生活は楽しいけど、タイムリミットのようなものを感じて時々苦しくなるということを涙を流しながら話す。彼の欲しい答えを主人公は今回は簡単には答えられず、落ち着くまで側に居るとすっかり夜に。
凪を家まで送ると、彼の二人の兄が出迎える。大柄な兄が凪を家に入れ、派手なほうの兄が主人公を車で家に送ることに。
「凪チャン何かあったっしょ~。俺も嵐クンも親父も外野なんかなーーんも気にすることないって言ってるし、凪チャンみたいな子だって沢山居るけど、
本人が自信を持ったり肯定しないといけないんだろうねえ…まあ、なんとかなるっしょ!到着ゥ~!今日はマジアリガト!凪チャンのこと、これからもヨロシクね~」
帰宅後、凪からメールが。
「次会うときはいつもの俺なんで、今日の楽しかったことだけ覚えていてください」
その言葉通り次はもういつもの凪になっていたが、誰かに悩みを打ち明けることで今までは諦めることしか考えられなかったのが、周りがそして自分がかけている呪いを解くにはどうしたら良いんだろうと考えるようになっていたのだった。
告白まで
♥
主人公は3年、凪は2年生になった。凪は主人公に懐く以上の感情を持っており、今年卒業してしまうことをとても寂しく思っていた。
凪は入学時は浮いていたが彼がやりたいことを貫いてきた結果、友達もファンも沢山増え学園の人気者の1人になっていた。
例:「「凪ちゃんせんぱーーい!」」「ん」「「キャーーーッ!!」」
しかしその実績に本人はまだ無自覚であり、自身の肯定はまだ出来ていなかった。
今年の文化祭で凪のクラスの出しものがメイド執事喫茶になり、凪は女装か男装かでクラスが割れる事態に。議論がヒートアップする中、「いや、俺が着る服は俺が決めるから」とメイド服と執事服を解体して自分の好きなように作り変え着る凪。
「ていうかこれも、メイドも執事も全部好きだから着たいんだけど!それで良くない?みんなもそうしようよ」「「確かに…」」
当日コロコロ衣装を変えて客引きをする凪やクラスメイトは好評であり、主人公にも褒められ笑顔を見せるのだった。
主人公の卒業間近、凪は男子生徒に呼び出されていた。陰で見守って欲しいと言われ、主人公が隠れているとやってきたのは去年凪に告白した男子だった。
「何の用?」「去年のこと、謝りたくて…」
あの時は女子として好きになって告白して振られ、凪に捨て台詞を吐いて去ったあとも、ムカついてずっと馬鹿に出来るところを探すために見ていたこと。でも見続けた結果、凪が悪い人間ではなくてむしろ良いやつで、自分の好きなものを通すカッコいいやつだと思えるようになったことと、謝りたかったことを話す。
「それであの、俺、多分月丸のこと好き…だと思う…女子みたいだからじゃなくて、でも恋愛って意味で…いや悪い、変だよな!」
「悪くないし変じゃない」「月丸…」
「お前の気持ちには応えられないけど、それは俺に好きな人が居るから。
…こんな俺のこと、好きになってくれて…ありがとう」
笑顔で二人は別れ、凪は主人公のもとに駆け寄る。
「大事な話、聞いちゃってごめん」
「ううん俺が頼んだから…。でも俺とアイツの大事な思い出なんで、秘密ですよ」
「気付いたら一緒に楽しんでくれる友達が沢山居て、慕ってくれるファンみたいな子も居て、気にすんなって笑ってくれる家族が居て、俺を俺として好きになってくれるヤツが居て、ずっと側で見守ってくれる先輩が居て…」
「ここに入って良かった。諦めるためにここを選んだけど、諦めなくて、本当に良かった…」
「俺、きっともう大丈夫です」
凪の笑顔は見たことが無いくらい晴れやかだった。
主人公の卒業式後。ガヤガヤとした校門から離れて二人は喋っていた。
「俺も自分が卒業するときはさすがに正装しますよ。靴だって指定のにするし。まあスカートは履きますけど。好きな装いで正装します。
そういうつまんないことで注意してくる人、今はこの学園の周りに居ないから良いけど…」
「先輩が居なくなったら、不安で自信なくすかも。なーんて嘘だけど。
でも寂しいのは本当なんで、変わらず沢山遊んでほしいです。…これからは彼女として。ね?」
エピローグ
♥
性別に関係なく着たい服を着続けている凪。今日はいつかのデートのリベンジとして、凪が決めたコーデを着た主人公と出かけていた。
しかし運悪く、いつかのようにあの男子たちと遭遇してしまう。
前と違うのは凪にとって彼らの存在はすっかりどうでもよくなったので、
「今、俺たち楽しい楽しいデート中なんだよね。邪魔すんな」
と向こうが何かを口に出すよりも早く笑顔で言い放った。
脆いときもあるけど、隣で見てくれる人が居るからもう簡単には壊れないのだと、凪と主人公は手を繋ぎ直すのだった。