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アンカー 1
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Yugure Akitaka story

「惚れっぽい先輩 × 主人公」

出会い


入学前、主人公(屋敷かすみ)は学校近くの堤防を自転車で走っていた。

景色に見とれた拍子に前の車輪が大きな石を踏んでしまいバランスが崩れ、主人公は土手に投げ出された!そこへさっき追い越して後ろを歩いていた男子学生が急いで駆けてきて、主人公の自転車と肩をがっと掴んだ。しかし主人公に引っ張られてしまい二人でザザッと斜面を落ちる。とっさに男性が草を掴んで--ゆっくり勢いがなくなり止まった。

助かった!怪我ひとつない!……主人公はほっと胸を撫で下ろす。しかし目の前の男を見ると、制服は裂け、体に生傷ができている。彼はこれから通う予定の学校の制服を着ていた。慌ててお礼を言うも主人公の無事を確認したら名乗らず立ち去ってしまった。

入学後、図書室で男子生徒と再会した。彼は本棚の下敷きになっていて、主人公は慌てて助けた。入学前の出来事を問いかけ、あの後大丈夫だったかと聞くと、君が無事ならそれでと言われてしまった。話し方が柔らかく、親しみやすい朗らかな人柄に当てられ主人公は彼が好きになった。 <スチル01>

​◇


四月後半、主人公は生徒会前の掲示板に貼られた部活勧誘のチラシを見ていた。どうせならやったことのないものをやろうと思った。

「柔道部マネージャー募集?これだ!」

勇気を出した主人公は応募用紙を持って柔道部に行くが、キッパリ断られてしまった!なぜなら柔道部2年のエース夕暮秋鷹がとんでもなく惚れやすい恋愛体質で、彼が女子マネージャーと恋愛に発展したら試合に支障が出て困るから、だそうだ。主人公「どういうこと……?」その夕暮先輩が現れると、入学前助けてくれたあの男性だった!色んな意味で驚く主人公。「実は夕暮、先週彼女と別れたんだ。君は彼女が居ないときの奴の気の多さを甘く見てる!」そう言うのは夕暮の大の親友を自称する柔道部員だ。聞けば聞くほど具体的にイメージできない主人公。しかし、実のところ柔道部はとにかくマネージャーが見つからないという問題に瀕していた。女子を禁止している場合じゃない!というわけで結局マネージャーになることに

頑張るぞと意気込む主人公だったが、甘く見てるの言葉の意味をすぐわかることとなる。「あいつら大袈裟だよ」と夕暮先輩は言うものの、そこへ化学の先生が通りかかり……。「先生メガネ変えたんですね。先生にすごく似合ってます。俺可愛くて好きです」「あら、そ、そうかしら……?メガネがよね?オホホ…」先生が直球で褒められ続け照れている。先生が去り、さっきのことを聞くと夕暮先輩は不思議そうに「だってそう思ったから」と言う。他にも、通りがかりの女子生徒に話しかけに行ってしまった。主人公はびっくりして「言ったそばから何またナンパしてるんですか!」と言うも、「あははは。面白いこと言うね。ただの世間話だよ、ナンパなんてしてない」と返され……。「(こんな人だったかな!?)」と事態が飲み込めない!

出会う女性すべてに気がある素振りを見せる先輩を見て、理解が追いつかず波が引くように心の距離が広がっていく主人公。ふと隣を見ると夕暮先輩がキラキラした目でこちらを見ている。主人公は自分も女子だと思い至った!「(と、とんでもない人だ……!)」小さな恋は幻滅に変わり、マネージャーの仕事をやっていけるかも不安になるのだった。

仲良くなるにつれて

しばらく柔道部に顔を出すうちに、夕暮秋鷹の女性が来るとそわそわする態度も慣れてきた。主人公はすっかり幻滅中で、彼に距離をとっていた。柔道部員との世間話の最中、夕暮先輩元恋人の数を聞いて驚いた。両手じゃ足りない、全然足りない!なぜそんなにモテるのか聞くと……。「だってあいつ、あれでいい奴だから」とのこと。「(あの軽さを打ち消すほどいい奴なことあるかなあ…)」主人公は困惑していた。


そんなある日柔道部員数名と買い出しに行くことに。別の用事がある朝市先生の車で駅のモールへ向かった。各々手分けして買い物へ行き、主人公は一足先に待ち合わせ場所の駅北口にいた。目の前は夜は物騒になる歓楽街だ。すると目の前の高架下で泥酔した男らが言い争っている。知り合い同士らしい。主人公と通行人は注目するが、どんどん雲行きが怪しくなってきた。つかみ合いの喧嘩になり通行人にぶつかり女性が派手に転んだ!

そこへアイスを買った柔道部員と朝市先生が戻ってくる、夕暮先輩は状況に気がつくとまっすぐそこへ行き男の手を取って背負い投げをした。そのままがんと地面にふせさせ、相手を取り押さえた。誰かが呼んだ警察が来て、その場は収まった。

転んだ女性の無事を確認し、警察といくらか話して戻ってきた夕暮先輩を朝市先生はたしなめた。「むやみやたらに割って入っちゃ駄目だよ。相手が危ないやつだったらどうするの。刃物を持っているかもしれないよ」今回は丸く収まったからいいけどいつもそうじゃない……と言うも、夕暮先輩は困ったように返事をするのみだった。主人公は不安げに夕暮先輩を見る、すると彼は「心配しないで、大丈夫。もし君に何かあっても俺が守ってみせるから」と言った。

主人公は助けた行為を立派と褒めつつもとてもハラハラした、朝市先生の言うとおりだと伝える。入学前、身を挺して自分を助けた夕暮先輩ならどんな危ない相手にも確かに向かっていくような気がしたからだ。主人公があまりに真剣なので夕暮先輩はたじろいだ。「そ、そっか?ごめんね……?わかった今度から気をつけるから」本当に気をつけるのかな?と疑問に思い主人公は目をじっと見る。すると向こうも視線をはずさない。そのままなぜか見つめあってしまった。夕暮先輩は観念したように笑った。「あはは、待って、本当にわかったから、そんなに見ないで。女の子とこんなに見つめあうことなんてないからさすがに照れるよ…!」気恥ずかしそうにする夕暮先輩を見て、今そういうんじゃない、と思う主人公。……反面、あまりにも照れるのでなんだかこっちまで恥ずかしくなってしまい視線を外した。


それから夕暮先輩を知るうちに、自称親友が言った「良い人」の意味がわかってきた。女性だけでなく男性や見知らぬ人間にも気さくで別け隔てなく、そして間違ったことを間違っていると言える心の強さを持っていた。

イベント

・家が小児科な夕暮先輩の家に行くと、病院に来ている子どもと楽しく遊ぶ姿が見れる。

・柔道部員の喫煙が見つかり、3年生となり主将となった夕暮先輩は退部させてしまった。「俺は友達が間違いを犯した時、なあなあに済ますことが友情じゃないと思う」いっときはその生徒と険悪になったが、夕暮先輩の卒業時には仲を修復している。

・短期アルバイト(球場のビールの売り子・等)をはじめた夕暮先輩、理由を聞くと大学は県外に出るため一人暮らしとなる。裕福である親に費用を出してもらえる環境の中、自分でできるぶんは自分で稼ぎたいとのこと。

告白まで

主人公がマネージャーになって1年と5ヶ月。女性に対してあからさまに意識する……ような行動は徐々に減り、柔道に集中していった夕暮先輩は高成績を残し部活を引退した。あきらかにしゃんと変わった夕暮先輩になぜかと聞いてみると、好きな人ができたから他に目移りしなくなったらしい。好きな人がいる事実にショックを受ける主人公。初めてあったあの日から、紆余曲折ありつつも彼に好意を寄せていたのだった。

そんな中、夕暮先輩は演劇部に頼み込まれ、文化祭の劇に脇役の王子様役(8人いる王子様役のうちのひとり)で出ることに。柔道部のマネージャーの傍ら、劇部に友達が居た主人公は、彼女を手伝うために裏方として頑張っていた。

文化祭前日、ハプニングが起こる。他の役者を庇って倒れた大道具を体で受け止めた夕暮先輩は、腕や背中を酷く腫らしてしまう。主人公は慌てて保健室に夕暮先輩を連れていくのだった。

「先輩は危険を顧みなさすぎです。本当に大怪我をしたらどうするんですか」「体が勝手に動いちゃって」悪びれない夕暮先輩に、主人公は難しい顔をした。「先輩と居ると……ドキドキします。悪い意味で。心臓に悪いです」「ごめんね。主人公さん、俺は大丈夫だよ、このとおり」怪我が酷くなくて、ほっと胸を撫で下ろす。だけど無事とわかるまで生きた心地がしなかった。主人公は先生の指示通り、夕暮先輩の腕を氷で冷やした。なおも不安げな顔の主人公を見て夕暮先輩が声をかけた。
「いつも助けてくれてありがとう。君がいるだけですごく心強くなる。ーーだからそんな曇った顔をしないで。笑顔が見たいな。君が笑うと俺まで嬉しくなるから」そう言われ、主人公は今まで思っていたことがつい口をついて出てしまった。「好きな人にだけ優しくするべきです。誰にでも優しい人が一番たちが悪い男だと思います。そんな事言われても私はただ、先輩の好きな人に申し訳ないです」夕暮先輩は驚いた様子で、返事に困ってしまったらしい、口をつぐんだ。主人公は言いすぎたと思った。

当日主人公は、夕暮先輩は持ってる人だからまた何か事件が起こるのではないかと危惧していた。舞台袖では夕暮先輩が小道具の指輪を持ってスタンバイをしている。同じく袖に居た主人公に話しかけた。主人公は昨日のことがあり少し気まずくて、話しかけづらかった。話題は昨日の出来事のこととなった。夕暮先輩は、「誰にでも優しくはしない」と言うと主人公に向き直り、「これは君にあげる」そう言って舞台に出ていってしまった。差し出されたのは小道具の指輪だった。「…………?」<スチル02>

劇監督に話を聞くと、この指輪は夕暮先輩の私物だそうだ。中を見ると立派な指輪だ。本物の石がついている気がする。主人公は考え込んだ。劇が終わり、帰り支度をする夕暮先輩に聞いてみた。夕暮先輩は困ったように笑って、何か言いたげだが言葉が続かない……。主人公はその指輪を持ち帰ることにした。一瞬告白されたのかと思ったが、そのあと特に何を言われるでもなく……。指輪は大切な物入れにしまった。

アンブレロ学園を卒業した夕暮先輩は、東京の大学に進んだ。家が街医者の彼は、親と同じ学校の医学部に進学した。主人公は月に2度ほどなんらかの理由があり夕暮先輩とメールや出かける機会があった。今日は共通の友人の誕生日プレゼントを買うためモールに来ていた。カフェでクリームののったコーヒードリンクを飲みつつ、主人公は向かいに座る夕暮先輩を見た。「(デートっぽい……)」と思う主人公。別日は二人で遊園地だ。多分デートだ!と思う主人公。夕暮先輩はおそらくこちらに気があるが、なんらかの理由で告白はしてこない……ような気がする。でも違うかもしれない。そんな関係が続いた。

友達の真昼くんと東京の大学を受験した主人公はふたりで合格。はれて春から大学生だ。意を決した主人公は卒業式の日、彼に好きだと伝えることにした。このままずっと友達関係で居られるかもしれない。しかしそれじゃ嫌になっていた。心から恋人になりたいと思った。行動を起こさないのは夕暮先輩もそうだが自分もそうだと自分でわかっていた。

式の後、主人公との約束で学校に来ていた夕暮先輩に会う。一緒に帰ることとなり、その道中告白することに。しかしいざそうなると喉まで出ていた言葉が出ない。今まで通り仲良くいられなくなるのが辛い。主人公はどうしても思いを伝えられなかった。
悩む主人公は気が散漫になっていた。そんな拍子に石につまづいてしまい、堤防から河川敷の斜面へ転んでしまう……寸前で、夕暮先輩が主人公の腕を掴んだ。「なんか前にもこんなことあったね」「あ、ありがとうございます」主人公を助けると、腕を掴んでいた手は主人公のてのひらへ移った。「…………ずっと君の助けになりたい。助けられるより助けたいんだ」夕暮先輩は一呼吸おいて、主人公に向き直った。「よければ、俺と付き合って欲しい」
夕暮先輩の髪が夕陽に溶けてきらめいた。主人公は酷く心が動いて、震える唇で「はい」とだけやっと答えた。すると夕暮先輩はきらきら光る眼差しをこちらに向けて、にっこり微笑んだ。照れて熱くなった彼の体温がてのひら越しに伝わる。

「君を愛してる。ーー世界中の誰よりも」

エピローグ

「あぁこの店。高校生の時来たことがある。覚えてる?君に渡した指輪ーーここで買ったんだよ。」「え!先輩が買ったんですか?」「そう……バイト代で。安物だけど。世間話の中で君にこっそり号数を聞いてね」なぜ指輪を渡したのか聞くと、「文化祭はせっかくの機会だし、告白しようと思った。でもできなかった。君が俺を好きなような気はしてたけど俺を選ぶビジョンがわかなくて。……もし断られたら、……悲しくて、生きていけなくなる気がしたんだよ」と言う。

主人公は実のところずっと夕暮先輩に壁を作っていた。​好きになっても思いは実らずただ傷つく予感があった。そしてその傷が一生消えない痛みになる気がしたのだ。私は、私こそ、三年間ずっとステージに立つ勇気がなかった。

「この中ならどのデザインが好き?」夕暮先輩の問いに答えると、彼はそれを2つ購入した。左手薬指にはめた指輪を眺めると石がきらりと光ってすごく綺麗だ。形になって見える愛が嬉しくて、主人公は目を細めた。

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